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暴力脱獄 (Cool Hand Luke)

おいらは子供の頃から映画が好きだ。特に中学生の頃は夜の8時や9時からテレビで放映している映画は毎日欠かさず見ていて、特に70年代より前の映画や俳優にはかなり詳しいほうだ。1940年以前に生まれたアメリカの大スターの生年なら今でもだいたい空で言える。大学生になった86年以降はあまり見なくなったのでここ20年間に作られた映画のほうが却ってわからないくらいだ。

最近のおいらの映画の見方は自分の好きな映画を繰り返し見るというもの。いい映画は見るたびに新しい発見があって、何度見ても飽きない。と言うわけで、おいらはそういった繰り返し見る映画のDVDセット「たまコレクション」を持っている。このブログのカテゴリー”映画評”に出てくるのはこのコレクションにある映画たちなのだ。

今回の映画評は「暴力脱獄」。「暴力脱獄」という日本語タイトル自体はパンチがあって悪くないのだが、英語タイトルは「Cool Hand Luke」なので直訳すると「クールな手のルーク」となる。この”手”と言うのはポーカーの”手”のこと、つまりワンペアやストレートといった”手役”のことを指している。なるほど日本語には確かに訳しにくいのだけど、「暴力脱獄」と言う題名もあまりに違いすぎてどうかと思う。やはり原題の「Cool Hand Luke」が一番しっくり来る。

主役でガッツのある囚人のヒーロー役のルークにはポール・ニューマン、身体がでかくて力も強いが文盲の囚人のリーダー、ドラグリンにはジョージ・ケネディが扮する。ジョージ・ケネディはこの役でアカデミー助演男優賞を獲得している。当時ポールニューマン以外の出演者はほぼ無名だったが、この映画の2年後に「イージー・ライダー」を監督して世界に衝撃を与えることになるデニス・ホッパーや「パリ、テキサス」のハリー・ディーン・スタントンなどが出ていて楽しい。ハリー・ディーン・スタントンはギターを弾きながら歌声を披露している、これがすごく上手い。ちなみにポール・ニューマンもバンジョーを持って弾き語りをしている。あとは「エデンの東」でジェームス・ディーンが演じたキャルの兄アロン役をやったリチャード・ダヴァロスも囚人の1人として出演。品行方正だったアロンが「エデンの東」で母親に会った後、堕ちて刑務所まで入ったような気がしておかしい。ちなみに「エデンの東」の母親役のジョー・ヴァン・フリートもルークに面会に来た後他界する母親役で出ている。

ルークはパーキングメーターを破壊したという珍しい犯罪で刑務所に送られてくる。その刑務所では、囚人は所長のことを「キャプテン」、看守のことを「ボス」と呼ばされ、何をするにも”ボス”の許可を取らなければならないという絶対服従の状況下に置かれている。例えば、水を飲むときは「ボス!水を飲ませてください」、上着を脱ぐときには「ボス!上着を脱がさせてください」というように。刑務所の”ルール”に逆らう囚人は容赦なく暴力の制裁を受けることになる。そしていつもミラーサングラスの奥にその素顔を隠した不気味な射撃名人の看守がそのライフルで受刑者たちを威嚇しているのである。

お調子者で口の減らない新入りのルークは牢名主のドラグリンを怒らせ、肉体労働作業が休みの日曜日に行われたボクシングの試合でぼこぼこにされる。しかし、何度叩きのめされても起き上がって抵抗を続けるルークに対して、最初はバカにしていた囚人たちも、ひいては相手のドラグリンまで関心を持つようになる。「何てガッツのある奴だ」と。

監房で夜な夜な行われる囚人たちのポーカーでは手役もないのにブラフでつっぱって勝利を収めたり、「ゆで卵を50個食べる」と言う賭けに半死半生になりながら勝利したり、気の遠くなるような道路舗装の作業を「看守が求める以上のスピードで仕上げてやろうじゃねぇか!」と言って他の囚人たちを触発して日暮れの2時間前に終わらせたりした。そして目的を達成するたびに無邪気な笑顔を浮かべるルークにいつしか囚人たちは魅了されていった。

そんなときルークに母親の訃報が届く。刑務所には親族の葬式に参列したい一心で脱走することを防ぐために、受刑者を刑務所の外で行われる作業には出さないというルールがあり、ルークは母親の埋葬が済むまで独房に入れられてしまった。そんなひどい仕打ちに発奮したルークは刑務所からの脱走を決行する。鉄条網をジグザグにまたいだり、ワイヤーを伝って川を渡ったり、水に飛び込んだりして、刑務所の追跡犬をかわして逃げ切る。追跡の疲労に倒れた犬の死骸が刑務所に戻ったとき、囚人達は歓喜に沸いた。

その後運悪く警官に遭遇し刑務所に連れ戻されたルークはすぐさま2度目の脱走を行う。黒人居住地域の子供たちを言いくるめて斧を調達し、前回の脱走の懲罰で足につけられた鎖も切って逃亡に成功する。しばらくしてドラグリンのもとに届けられた雑誌には、両脇に美女をはべらせたルークの写真が・・・。このときルークは完全に囚人たちが果たせない夢を体現するヒーローになっていたのだ。

しかし脱走者に対して世間の風は冷たく、ルークは再び刑務所へ。面子を2度までつぶされた所長と看守はルークを執拗に痛めつけ、ついにルークは屈服してしまう。看守の足にしがみつき、泣きながら「心を入れ替えます」と懇願するルークに他の囚人たちは落胆し、疲労で立つこともできない彼に手を貸す者もいない。「おまえらどこにいるんだ。なぜ助けてくれないんだ。」悲痛なルークの声が監房にこだまする・・・

この時ルークには2つの選択肢があった。ひとつはこのまま他の受刑者たちに蔑まれながらおとなしく刑期を終えること。もうひとつはもう一度ガッツを見せること。看守に対して犬のようにへつらうふりをしていたルークは突然、作業にトラックを盗んで3度目の脱走を決行した、「クールなルーク」の復活に喜んだドラグリンもそのトラックに飛び乗った。

大衆とは勝手でいい気なものである。自分が憧れていてもできないことをやってくれそうな人、例えばカリスマの政治家、芸能界のスターやプロスポーツのヒーロー、を見つけては勝手に期待する。スターやヒーローが期待に答えれば、その期待をますます大きくし彼らを押しつぶす。もはや期待に答えられなくなったスターやヒーローに対し「自分の託した夢を壊された」と大衆はこれまた勝手な感情を抱き、彼らを罵倒し、憎みはじめる。

最後の脱走でルークは逃げずに教会に入り、神に対して詰問する。「あんたは俺にこれ以上何をさせようとしているんだ?」

突然、パトカーの赤色灯の光が教会の窓から入ってくる。ルークと分かれたあと臆病風にふかれたドラグリンがルークの居場所を所長たちに伝えたのだ。もちろん所長は単純なドラグリンに対して「お前もルークも悪いようにはしないから」と言い含めていた。ルークは神に対して「これがあなたの答えですか」とつぶやき、窓際に立った。

囚人達の夢を守り、看守に撃たれたルークは乗せられた車の中で、笑顔を浮かべながらこの世を去る。激怒したドラグリンがルークを撃った看守に襲い掛かったときに地面に落ちたミラーサングラス。ルークを乗せた車のタイヤが破壊したサングラスは、彼が一瞬踏みつけにすることに成功した権威の象徴だったのかも知れない。

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