スポンサードリンク

上海隠遁ビート!!! >  昔の話 >  温い黄金の水

温い黄金の水

すっかり傾いた太陽が、同じデザインの巨大なマッチ箱を横に立てたような団地群をオレンジ色に照らす。僕とおさむは48世帯が暮らす団地の出口の1つで無言でどんぐりを削っていた。どんぐりの側面の一部を削って、中にある実をすべて掻き出すと小さな船が出来上がる。各団地に6つずつある出口にはおのおの水道水の蛇口がついており、そこから出る水と地面のコンクリートは子供にとっては絶好の作業場であった。

背中に夕暮れ時の太陽を感じながら僕はふいに尿意をもよおして立ち上がった。子供達がいつもトイレ代わりにしているレンガ塀の影に向かおうと思ったのだが、何気なく視線を右下のほうへ落としてみると、ちょっと太り気味のおさむが背中を丸めてしゃがみながら一心にどんぐりを削っている。ふと、「背中におしっこをかけたらどうなるのだろう?」という考えがよぎるやいなや、僕は半ズボンの横からちんちんを出していた。

nkuiougon.jpg
ほとばしり出たおしっこは横から夕焼けを浴びて、きらきら輝きながらおさむの背中を目指した。最初の一滴が着弾するまではスローモーションのようだった。おさむが着ていた鮮やかな黄色のシャツは液体が到達すると少し暗い黄色に変わり、その部分はみるみるうちに広がっていった。

いままでに経験したこともない生暖かい感触に驚いたおさむはゆっくりと後ろを振り返った。目に入ってきた光景を見て彼はまず何を思ったのだろうか?

ほどなく耳を劈いた泣き声に僕ははっと我に帰り、同時に困惑した。おさむとは当時よりずっと小さなころから一緒に遊んでいたのだが、こんなに大きな声で泣いたことなどなかったからだ。「たいへんなことになった」突然、言葉にできない恐怖にとらわれた。僕はおさむに何度もあやまった。だが、おさむは大声で泣き続けるばかり・・・。僕は悲しくなり、自分も泣き出した。そしておさむに懇願した。「ぼくにもおしっこをかけていいよ。」しかし、おさむは仕返しをしてくれなかった。

彼は大声で泣きながら自分の家のほうへ歩き出した。僕はパニックになった。どうしていいかわからないまま、自分の背中を水でびしょびしょに濡らしていた。家に向かうおさむの姿は小さくなっていた。

おさむの母親がどなりこんでくるまでおそらく30分とかからないだろう。しかし、それまでの時間はとても長くて怖い。「はやくすべてのことが終わった明日になっていればいいのに・・・」、そういう風に考えるしかすべがない。家に帰ると親父はいつになく機嫌が良いようで、下手な演歌を口ずさみながら風呂場の掃除をしている。だが、それも次に来客の呼び鈴が鳴るまでだ。それと同時に僕は、僕は・・・

スポンサードリンク

1073
26165

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.hanpeita.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/24

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

         

昔の話

関連エントリー

こんだら 親父の危機2 おいらのオリンピック 親父の危機1 おおきなお世話だ ひょんなことから知った、いい話 金網製の軽いゴミ箱 アウトバック 水柱 はちみつ色の不覚 激突! ぴゅうと風が吹いている 落ちた2 落ちた1 バサキ 温い黄金の水 あのベルを鳴らすのはあなた 体操部 周敬