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当たり屋

横断歩道を渡る人たちが陽炎に歪む、うだるような午後だった。

自宅の近くにある一方通行の1.5車線道路ほどの通りを車で走っていて、ふいに空気が灰色になった気がした。前を走るのは追突でもされたのか、後部トランクの部分がわずかに本来のフォルムより内側に凹んだ真っ白なシーマだ。先ほどから後ろには旧式のメルセデスが私の車にピッタリ車間を詰めて走っている。

この道で前後に車がいるなんてめずらしいなと思いながらのろのろ走っていると、後ろのメルセデスが盛んにクラクションを鳴らし始めた。後頭部に突き刺さるような音が私の神経を過敏にさせた。私はゆっくりと左周りに振り返り、その音を発している人間を見ようとしたとき、右目の片隅に感じた光景に違和感を感じた。前の車が急停車したのだ。と同時に、私は咄嗟に左足を踏ん張っていた。

「キキーッ!」

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私の乗っているグロリアはサイドブレーキが左足の下にあった。何も考えずに左足を踏ん張ったのはほんの偶然、しかし私の車は前の車の10センチほど後方でその車体を止めることに成功した。

「危ないところだった」と思ったのもつかの間、前の車の運転手がドアを開き、チンピラ風の柄の悪い男が降りてきた。その男は私の車の横に立ち、「おい、開けろ」とでも言わんばかりに左手でコツコツ運転席の窓をたたき始めた。私は不安な気持ちを奮い立たせて、窓を開けた。

「ナイスブレーキ」男はかすれた低い声で言った。

振り返ると、メルセデスの男は運転席の窓から半身を乗り出し拍手をしていた。

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