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落ちた2

「さあ、いこうぜ」

おいらは西田の首をひと巻きして交差している紐を引っ張り歩き始めた。西田はアゴを上げながら付いてくる。目はうつろだったが、もともとうつろな目をしていた彼からはその表情の変化は読み取れなかった。6歩ほど歩いたときだったろうか、西田は膝から崩れ落ちるように倒れた。

ほどなく異様な雰囲気に気づいた他の生徒達が集まってきた。何人かが半うつ伏せの状態で横たわっている西田を仰向けの状態に反した。西田は白目を剥いていた。このごろではすっかりおどけ者としてのイメージをかもし出していた西田だったので、おいらも最初のうちは冗談だと思って現実味がなかったのだが、周囲にいた者が「西田、おい西田」と呼びかけても、彼の頬を数度軽くはたいても反応がない。

どうやらこれはしゃれにならないことが起こった。と、認識したときには、おいらは自分が親と一緒に西田の遺族の前でひれ伏している姿を想像した。西田の母親は泣き崩れ、父親は目の前の家族を食い殺さんばかりの視線でにらみつけている。そして、すでに学業の道から離れ、極道のルーキーとしてひと修羅場こなした他の少年犯たちと一緒に護送車に乗って少年刑務所に向かう自分の姿が現れた。

半時ほどたったろうか、バスケットボールのパスを廻しあうおいらたちの姿を青白い顔をして床に座っている西田が眺めていた。西田は柔道で言うところの”落ちた”状態で、気絶していただけだったのだ。「西田よ、生きていてくれてありがとう」おいらは心の中で叫んだ。今すぐ駆け寄ってあいつを抱きしめてやりたい気持ちだった。

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