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はちみつ色の不覚

もう一時の猶予もならなかった。木造校舎の廊下をきしませながら、僕は走った。トイレは校舎を出て、渡り廊下のある通路を右に曲がってすぐだった。校舎から通路への降り口には少し段差があったが、僕は軽々と飛び降りてやり過ごした。外の空気はひんやりとしていて、葉っぱと土のにおいがした。

「甘利!」突然、誰かに呼び止められた。声の聞こえた左側に振り向いた瞬間、僕の身体はうつぶせにたたきつけられた。渡り廊下の切れ目に足を引っ掛けたのだ。心の中で「やばい!」と思った、ころんだ時に身体が弛緩したのだ。これまでに経験したことはないが、その時の自分の状況を考えるとすごくまずいことが起きると一瞬の内にはっきりと感じた。

ほんの一、二秒のちに僕は両腕を地面について身体をおこし四つんばいの体制になって、自分の足の間を見た。体育用の白い短パンからはちみつのような色をした液体が垂れ、足をつたって流れ出ていた。

「もれちゃった・・・」僕は誰に向かって言うでもなく情けない声で言った。

さっき脇から声を掛けたクラスメートの尾関が庭ぼうきを持ったまま、駆け寄ってきた。

「大丈夫か?」

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