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おおきなお世話だ

学生時代、中央線三鷹駅に程近い六畳一間のアパートに暮らしていた頃の話である。よく晴れた冬の日であった。おいらは何か約束があってどこかの待ち合わせ場所にでも向かおうとしていたのだと思う。木造アパートの2階にある部屋から出たところ、地上から2階へつづく階段を2人の若い女性が上ってきた。1人は黄色いカーディガンにベージュのフレアースカートをはいているかわいい顔をした小柄な子で、もう一人は背が高く異様にやせていてめがねをかけていた。

階段を上りきったあたりですれちがった時、かわいい方がおいらに声を掛けて来た。

「すみません。ちょっとよろしいですか?」

「えっ?」まさか話しかけられると思っていなかったおいらは意表をつかれたかたちで反応した。

「あなたは聖書を読んだことはありますか?」

「いや、ないですけど」

エ○バの証人の布教活動である。しかし、その時おいらはまだその存在を知らなかった。キリスト教などまったく興味はなかった、しかし無碍な態度を取るのも悪い気がしていたので話を聞いていたが、その内その子と議論になってしまった。たしかおいらが「殺人を繰り返すような凶悪な人間は死刑になったほうがいい」という考えを言ったときにその女が異常に反発をしてきたのだ。彼女たちが信じる宗教の教義に合わない意見を許せないのか、おいらは考え方を改めなければならないというようなことを言ってきた。タダでさえ待ち合わせの出掛けに時間を取られいるのに何故批判されなければならないのか?おいらはだんだん腹が立ってきたので、「だってそうでしょう?あきらかにその人が多くの人間を不幸にしていてこれからも人に迷惑をかける可能性があるのなら、そんな人を生かしておくのは不合理でしょうが」と強い口調でまくし立てた。

それまで黙ってそばで話しを聞いていためがねがおもむろに自分の顔の前で手を組み、ちょうどキリスト教徒が教会でいのるときにするように、言った。

「おお神よ。どうか彼をお許しください。この男は何もわかっていないのです・・・」

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