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親父の危機2

入院して3~4日経ったころから、徐々に意識を回復して言葉を発するようになってきた。しかし、一見まともに話しているように見えても実際には意識が混濁しているのだろうか、話しの内容は支離滅裂だった。また、病室の中に存在しない巨大な虫が見えるなどの幻覚もあったようだ。

入院後5日ぐらいを過ぎたところから、少しずつまともなことを話すようになってきた。が、同時にひどくわがままになった。いまだ集中治療室に居る状態ながら「家に帰る」と言って聞かない。鼻に取り付けてある呼吸用の管も自分でむしりとってしまうので、しまいには看護師にベッドに縛り付けられてしまった。

ある日いつものように病室に見舞いに行くと、「わたしのお墓のまえで泣かないでください~♪」という歌声が聞こえてきた。親父が集中治療室のベッドに横たわったまま”千の風に乗って”を歌っていた。その歌声が危険な状態にある患者たちがひしめく病室にこだまする。意識があるのかないのかわからないが、時と場合を考えるとしゃれにならない歌だ。むろん、空気を読めと言うのは無理があるのかもしれない。

ふと、振り返ると看護師たちが顔をそむけて笑いをこらえていた。

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